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不安と緊張 密室 PART3 [生活]


「ちょっと、指をぐっーと伸ばしてみて、はい曲げて…」切り裂かれたまま動きの確認が始まる。医師たちは肉の中で伸び縮みする筋をきっと見ているに違いない。「どうですか、引っ掛からずに動くようになったでしょ」何度か指を動かしてみる。痺れて動作がしずらいものの指は確かにスムーズに伸び、違和感のないことを伝える。何だかサイボーグにでもなった気分になってきた。
「親指は終わりました、中指に注射しますよ」と同時に先ほどよりも痛いチクッーが三度も。シュワルツェネッガーやスターローンじゃあるまいし、やわなサイボーグは三回ともうなってしまった。より一層痺れきった手のひらでは最初と同じような作業の感触が伝わってくる。「もう少しですよ」看護婦が小声で言った。
「はーい、終わりました。後は縫っておしまいです」縫っている感触の後は、多分もう一人の看護婦が包帯を巻いている様子がわかったところでやっと緊張感が和らいだ。
「どうってことなかったでしょ」顔を遮っていた布が取られると同時に永嶋主治医はにこやかに言った。その後の説明を簡単にすませ三人の医師達は自分と看護婦二人を残し先に手術室を出る。約一時間と少しの手術が逐に終わったのだ。初老の看護婦はねぎらいの言葉をやさしくかけてくれる。「どうもお世話様でした」と言いながら台から身を起こすと、また例の車椅子に乗せられた。帰りは他の手術室の様子をきょろきょろと気楽に観察してしまう。元のロッカーの前でパンツ一枚になって着替えをしていると、先の診察室の方の若い看護婦が迎えに現われ、看護婦二人して靴下からズボン、シャツまではかせながら、「女、二人も侍らせるなんてそんなにありませんよ」とからかわれてしまった。手術室付の看護婦に再度礼と別れを告げた。「この仕事ばっかりはまた会いましょうとは言えませんからね」と重い扉ごしに会話しながら若い看護婦に連れ立って密室を抜け出すことができた。途中で看護婦と別れ、長い廊下を歩いて玄関に向かう。真白い包帯の巻かれた左手を見ていると、今迄こうゆうことには無縁なこともあって全くもって他人の手を見ているように思えてくる。
外はいつのまにか少し雨が降っている。どこからともなく真っ赤なもみじの葉が一枚舞い落ちた。
【おわり】


そうなんです。不安感と緊張感ある思いとはこんなオペレーションのことでした。内蔵手術なんてなったら、どうなっちゃうんでしょう!そんなことにならないためにも、おやじとしては日々の健康に気をつけなくちゃね!


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